基本的な考え方

近年、世界的に「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への移行が加速しています。DOWAグループは、鉱物資源の循環(マテリアルリサイクル)を自らの存在意義と定め、独自の「循環型ビジネスモデル」を活かし、限りある資源を有効に活用しながら、循環経済の実現に寄与することを目指しています。
“リサイクル”があふれる今だからこそ、私たちは複合的かつ長期的である「本質的な循環」を目指し、新たな発想と培ってきた技術を駆使して産業・社会全体と連携することで、循環のクオリティを追求していきます。

本質的な循環を実現する「循環型ビジネスモデル」

当社グループは独自の「循環型ビジネスモデル」を構築し、「つかう」「捨てる」「集める」「分ける」「つくる」という資源の循環・リサイクルに関する一連の活動に、複合的・多角的に貢献しています。
具体的には、「環境・リサイクル部門」が、役目を終えて捨てられた製品などを集め、「製錬部門」と連携することで資源を分け、素材の状態へと再生しています。これにより、廃棄物の無害化や金属リサイクルを行うことで、環境負荷の低減を図っています。さらに、再生された素材に対しては、「電子材料部門」「金属加工部門」「熱処理部門」がそれぞれの高度な技術を活かし、素材の価値を一層高めることにより、自動車や電子機器などの高度化・高機能化に貢献しています。
日本が国家戦略として掲げる「循環経済」の実現には、単なるリサイクルを超えた「本質的な循環」が不可欠です。当社の「循環型ビジネスモデル」は、その実現に向けた有効なアプローチであると考えています。

3つの資源循環ループ

DOWAグループでは、自社の製造工程、他社の製造工程、そして社会から発生する廃棄物まで3つのループを通じて、限りある資源の有効活用に取り組んでいます。同時に資源循環における社会的責任として、適切な水処理、廃棄物の無害化、確実な最終処分など、リサイクルのあらゆる段階で環境負荷の最小化に努めるとともに、処理工程で発生する熱を蒸気や電力として活用するなど、環境保全と省エネルギーに配慮した持続可能な資源循環を目指しています。また、当社でリサイクルできない紙、鉄、アルミなどについては、他社のリサイクル工程を通して適切に資源化されるよう努めています。

 

  1. 自社内発生・自社利用で、当社の製錬や金属加工などの「製造事業」で発生した廃棄物を「環境事業」「製錬事業」でリサイクルしています。金属素材として販売するほか、当社の原料として再利用を行っています。
  2. 他社の製造工場の工程から発生する金属くずなどを受け入れて行うリサイクルです。当社の素材や部品を納める顧客工場からの場合は、受け入れた廃棄物を原料として再び活かすなど、新たな資源投入量の削減に繋がっています。
  3. 使用済みの最終製品のリサイクルです。家電リサイクルや自動車リサイクル、小型家電リサイクルなどを通じ、社会から幅広く回収された使用済み製品は、金属素材として再び社会に還元されます。

金属リサイクルの強化

リサイクル製錬所である小坂製錬を中心とする、環境ビジネスとリサイクル製錬を組み合わせた独自のビジネスモデルのより一層の強化を進めています。リサイクル原料の集荷拡大や各工場での設備増強、回収する金属の種類拡大を進めるなど、環境・リサイクル部門と製錬部門の協働によりリサイクル原料由来の金属比率の向上を図ります。

環境・リサイクル部門と製錬部門の融合

資源循環のさらなる強化に向けては、環境・リサイクル部門と製錬部門の融合が不可欠となります。そのために環境・リサイクル部門における前処理機能の強化によってリサイクル原料の集荷拡大・増処理を図るとともに、製錬部門での設備増強によって設備効率を向上させ、より多くの金属の回収を目指します。

廃棄物管理・適正処理の考え方

当社グループは事業活動によって発生する廃棄物の再利用や製品包装などの削減に取り組み、廃棄物の削減および適正管理を推進しています。
また、資源循環が推進されている一方で、どうしても再使用も再生利用もできない廃棄物が存在してしまいます。そうした中で、当社グループは発生してしまった廃棄物を焼却処理などにより無害化することや、安全で適切な最終処分場を運営することで、社会全体の廃棄物を適切に管理しています。このような廃棄物処理事業は、社会の公衆衛生や安全性の確保など重要な役割を担っており、さらには資源循環を強化するための社会インフラとしても必要な役割となります。
当社グループの廃棄物処理事業を通じて、社会に対して安全・安心を提供し続けてまいります。

DOWAの事業とSDGs

金属資源を利用することで成り立っている当社の事業にとって、SDGsの目標「12.持続可能な消費と生産のパターンを確保する」は、最も影響があり、かつその貢献において大きな力を発揮することができる領域と考えます。企業理念に示す通り、「資源循環型社会の構築」に 当社の技術やリソースを通じて取り組んでいくことで、目標12の達成を目指します。

目標と実績

当社グループは、リサイクル原料の集荷から、高効率な金属の生産、金属の高付加価値化というサイクルを実現する循環型ビジネスモデルを構築しています。

主な施策

指標

目標

リサイクル原料の集荷拡大

小坂製錬向けリサイクル原料の集荷量

(2021年度=100)

110

(2024年度)

使用済み排ガス浄化触媒の集荷量

(2021年度=100)

140

(2024年度)

LIBリサイクル処理量

(2021年度=100)

400

(2024年度)

リサイクル原料由来比率の向上

生産する金属に占めるリサイクル原料由来比率

(製錬部門の売上高ベース)※

70%

(2024年度)

※本項目の「リサイクル原料」には、小坂製錬向けリサイクル原料以外の2次製錬原料等を含みます。

リサイクル原料の集荷拡大

当社は日本、アジア、北米、欧州などに広がるグローバルな原料集荷ネットワークを構築しています。また、直接営業を通じた柔軟な顧客対応と集荷ノウハウの蓄積により、顧客の多様なニーズに応えています。

小坂製錬向けリサイクル原料の集荷量

世界的にリサイクル原料の集荷競争が激化しています。また、基板における省金属化の潮流によって基板に使用される金属の低品位化が進展しています。そのような中、前処理機能を拡充することにより低品位化や難処理品への対応を強化するとともに、集荷エリアの拡大を行った結果、「中期計画2024」の目標110に対して、6pt上回る集荷量を達成しました。

使用済み排ガス浄化触媒の集荷量

使用済み排ガス浄化触媒については、2022年度から白金族金属の価格が下落しました。以降も価格が停滞したことから、使用済み排ガス浄化触媒を取り扱うリサイクラーが当社への出荷を控え、流通量が減少したため、当社の使用済み排ガス浄化触媒の集荷量も低迷しました。その結果、2024年度の使用済み排ガス浄化触媒の集荷量は目標の140を大きく下回る68となりました。

使用済みリチウムイオン電池リサイクル処理量

エコシステム秋田とエコシステム山陽では使用済みリチウムイオン電池(LIB)のリサイクルを行っています。使用済みLIBは、廃棄・解体時に感電や発火などの危険性がありますが、当社は既存の廃棄物処理炉の活用により大型品でも解体が不要であり、また、熱処理により安全にLIBを不活性化できることに強みがあります。「中期計画2024」期間の3年間では、電池メーカーなどからの工程スクラップを中心に使用済みLIBリサイクル処理を推進し、処理量を着実に伸ばしましたが、目標の400には未達となりました。

リサイクル原料由来比率の向上

当社グループは「中期計画2024」において、生産する金属に占めるリサイクル原料由来比率(製錬部門の売上高ベース)の向上を進めています。

生産する金属に占めるリサイクル原料由来比率

2024年度のリサイクル原料由来比率は69%となり、2023年度より11pt上昇しましたが、目標の70%には未達となりました。これは、主に白金族金属の価格が下落したことに伴い使用済み排ガス浄化触媒の集荷量が2022年度から低迷したことによります。

持続可能な資源利用に向けた取り組み

資源の有効利用においてリサイクルは一つの解決策ですが、金属を効率的に回収する技術に加え、その過程で発生する有害物や非有害物を安全に処理するための技術とインフラも必要です。同時に、効率的にリサイクル原料を集荷する社会システムの構築、多種多様な原料を処理する手間やコストなど、リサイクルにも解決すべき技術的・経済的な課題が存在します。当社は、資源循環における様々な課題と向き合いながら、持続可能な金属資源の利用に取り組んでいます。

リチウムイオン電池のリサイクル

リチウムイオン電池(LIB)は、携帯電話から電気自動車(EV)まで幅広い用途で使用され、需要が拡大しています。一方で、廃棄・解体時に感電や発火の危険性があることや、使用済みリチウムイオン電池から回収できる金属の価値が市場価格に左右されることなどから、継続的・安定的な処理方法が未確立であり、将来の大量発生期に備えた安全で効率的なリサイクル体制の整備が望まれています。当社グループは、市場形成期の需要に確実に対応するためリサイクルプロセスと技術の競争力をさらに強化しています。

当社グループのエコシステム秋田(秋田県大館市)、エコシステム山陽(岡山県久米郡)において、使用済みリチウムイオン電池のリサイクルを行っています。また、当社の環境・リサイクル部門を担うDOWAエコシステムは、2018年10月から(一社)日本自動車工業会のリチウムイオン電池の共同回収スキームに参画しており、電池リサイクル施設としてエコシステム秋田およびエコシステム山陽が登録されています。

使用済みリチウムイオン電池からの正極材リサイクル

2022年11月に秋田大学との共同研究により、熱処理後の使用済み車載用リチウムイオン電池からの正極材リサイクルに成功しました。今回、熱処理で不活性化した使用済みリチウムイオン電池から回収した、不純物を一定程度含む正極材成分(ブラックマス)を原料として再び正極材を製造しました。その結果、蓄電容量や繰り返し充放電に対する安定性において、市販されている車載用リチウムイオン電池と同等の特性が得られました。今後は、不純物と電池性能との詳細な関係を明らかにしていくとともに、より効率的に不純物含有量を制御できるプロセスの開発に取り組みます。

資源循環におけるバリューチェーンの最適化

当社グループでは、貴金属、家電、自動車、使用済み小型家電など幅広いリサイクル事業を展開しています。単一のリサイクルを断片的なチェーンで行うのではなく、設備の技術的特性や拠点の地理的状況などを踏まえて計画的に処理を行うことで資源効率性を高めています。また、運輸、分析、研究所などの部門とも連携して、資源の有効活用に向けた取り組みを進めています。さらに、必要に応じて異なるセクターや社外パートナーとも連携し、バリューチェーンの最適化に取り組んでいます。例えば、当社は鉄鋼メーカーと協業し、鉄鋼ダスト(亜鉛二次原料)から金属回収を行い、二次原料による亜鉛の再資源化を推進しています。
また、当社のビジネスモデルの大きな特徴は、リサイクルだけでなく廃棄物処理事業を行っていることにあります。当社は長年リサイクル技術の向上に努め、金属のさらなる再資源化に取り組んでいますが、現実には再使用も再生利用もできない廃棄物も存在します。そのような廃棄物を適切に処理・管理する施設をグループ内に保有することで、資源効率性の向上と環境保全や安全性を両立させたバリューチェーンの一端を担っています。

リサイクル金属を確保・活用する資源循環スキームを共同で構築

DOWAエレクトロニクスは、顧客である村田製作所から、サプライヤー表彰を受けました。村田製作所では、事業の発展に貢献・協力したサプライヤーを対象に、毎年複数社を選定して表彰しています。今回、DOWAグループと村田製作所の間で金属資源を循環してリサイクル金属を確保・活用する資源循環スキームを、共同で構築したことが評価されました。

使用済みリチウムイオン電池リサイクルのサプライチェーン構築に向けたパートナーシップ協定

廃棄物処理・資源リサイクルに関する市場ニーズが多様化する中、資源循環のサプライチェーンにおいて社内外との連携を強化しています。リチウムイオン電池リサイクル事業においては、2024年3月に住友金属鉱山(株)と使用済みリチウムイオン電池リサイクルのサプライチェーン構築に向けたパートナーシップ協定を締結しました。当社が保有する、感電や引火のリスクを最小限に抑えつつ、熱処理で蓄電機能を破壊し電解液中の有機溶剤を無害化する技術とノウハウを活用し、効率的なリサイクルフローの確立に貢献していきます。

リサイクル原料を100%使用していることの妥当性を確認するUL2809環境ラベル検証を複数製品で完了

当社グループでは、製品中のリサイクル原料についての評価・検証の手順に関する規格であるUL2809による検証を進めています。UL2809の検証が完了した製品は、リサイクルプロセスが客観的に評価されていることになるため、信頼できるリサイクル素材を購入しようと考えている際の目印になります。
2023年8月にエコシステムリサイクリング(埼玉県本庄市)が製造するシアン化金カリウムのUL2809に係る検証が完了し、その後、2024年3月にDOWAエレクトロニクス岡山(岡山県岡山市)が製造する導電性アトマイズ粉について、2024年8月にはDOWAメタニクス(静岡県磐田市)が製造する伸銅品(Y-CuT FX)についての検証が完了しました。これらの製品は、従前より原料にスクラップ等からリサイクルした金属を100%使用していました。SDGsの意識の高まりや、さらなるリサイクル製品・サービスの多様化に向けて、両製品のUL2809に基づく環境ラベル検証を行い、これらの製品がリサイクル原料を100%使用していることの妥当性が確認されたこととなります。
当社グループは、持続可能な社会の構築に貢献するため、リサイクル原料を使用した金属製品の拡大を図っていきます。

国際資源循環の推進

世界全体で資源の持続的利用を進めていくためには、環境負荷の低減と資源効率の最大化を図り、国境を越えて連携することも必要とされます。当社は、独自のリサイクル技術やインフラ、知識、経験、人材などのリソースを活用し、日本だけでなく、中国、シンガポール、タイ、インドネシア、ミャンマーにおいても、金属リサイクルや廃棄物処理事業を展開しています。また、リサイクル原料の主要な発生地である北米や欧州において、営業拠点やサンプリング拠点を活用しながら集荷を行い、国内の製錬所でレアメタルの回収を行うなど、環境保全と両立するグローバルな資源循環システムの構築を進めています。

外部団体との協働

サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ

DOWAグループは、経済産業省の「成長志向型の資源自律経済戦略」を踏まえ、循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現のために立ち上げた「サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ」に参画しています。当パートナーシップは、国、自治体、大学、企業・業界団体などのサーキュラーエコノミーに積極的に取り組む組織の有機的な連携を図り、サーキュラーエコノミーの実現に必要となる施策についての検討を実施します。当社はこの活動を通して、パートナーとの協業に取り組み、循環型社会の実現に寄与します。

東北大学大学院環境科学研究科 DOWAホールディングス寄附講座 開設20周年記念シンポジウム

当社および国立大学法人東北大学は、東北大学大学院環境科学研究科に設置しているDOWAホールディングス寄附講座(正式名称:環境資源循環学講座、以下、DOWA寄附講座)が開設20周年を迎えることから、2024年9月に開設20周年記念シンポジウムを開催しました。本シンポジウムでは、経済産業省や環境省、最先端の研究を行う大学から講師をお招きし、現在そして未来のサーキュラーエコノミー(循環経済)を中心とするご講演をいただきました。