DOWAグループは、140年以上の歴史を経て、循環型社会の形成に資するビジネスモデルを構築してきました。世界中で循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行が進む中、当社事業の価値は必然的に高まっており、本業を通じた貢献を果たすことが、当社の新たな使命と考えています。その使命を果たすための道筋として、2025年5月に「循環のクオリティを追求する。」をメインテーマとする「中期計画2027」(2025~2027年度)を公表しました。長きにわたり循環型社会に貢献してきたという自負を持ち、これまでに培ってきた技術と知見を結集することで、循環のクオリティのさらなる向上を追い求めていきます。
これまで循環と言えば3R(リデュース、リユース、リサイクル)が中心でしたが、今後は資源循環の質的なイノベーションが求められる時代となります。「複合的な循環」と「長期的な循環」を基本戦略として掲げ、当社の5つのコア事業をそれぞれ強化・成長させ、クオリティの高い循環の実現を目指していきます。
さらなる事業領域の拡大には、5つのコア事業の競争力を高めると同時に、事業間の連携をさらに深めることが不可欠です。これまでも事業の親和性が高い環境・リサイクル部門と製錬部門は相互に連携し、当社グループの特徴となっていました。この2部門間の連携以外にも、それぞれの強みを活用する新たな技術連携が始まりつつあります。また、循環経済を実現・推進するうえでは、すべてを当社で完結させるのではなく、競争力向上につながる戦略的パートナーとの信頼ある共創を積極的に進めていきます。領域を限定せず、シナジーの見込める分野、発展性のある事業、当社の知見や人材が活かせる分野を対象に、積極的に循環の輪を広げていきます。
気候変動対応については2050年までにカーボンニュートラルの達成を目指しており、「中期計画2027」では、これまでの3年間で策定した対応方針・目標・実行計画に基づいて、事業競争力の強化と両立する気候変動対応を実行していきます。
直接的なGHG排出量の削減と事業競争力の強化の両立に向け、引き続き、技術開発にも注力していきます。また、当社は気候変動対応に貢献する幅広い製品・サービスを市場に提供し、社会のGHG削減に努めています。一方で、当社の社会的使命の一つであるマテリアルリサイクルは、その過程で膨大なエネルギーを必要とし、リサイクル量を拡大することは直接的なGHG排出量の増加に繋がります。また、廃棄物を安全に処理するための焼却工程においてもGHG排出は避けられません。そのため、当社の製品・サービスを使用することによるサプライチェーン全体での脱炭素への貢献を、ライフサイクルアセスメントの手法により客観的に評価し、当社の持続的な成長とカーボンニュートラル社会の実現の両立が可能であることを示していきたいと考えています。
国内における生産拠点の多くは、人口減少や高齢化といった社会的な課題に直面する地域にあります。そのため、DXの導入や技術力・人的資本の強化といった持続的な事業活動を行うための経営基盤の強化は、喫緊の課題と言えます。
DX推進については、「中期計画2024」で事業データ連携によるビジネス変革の実現、基幹システムの刷新など業務の基盤整備を完了させました。「中期計画2027」では、各現場での変革をより多く実現していくことが鍵となり、当社や各現場に最適化された仕組みを地道に作り上げていきます。新しい技術の開発、徹底した品質管理の維持など、新たな挑戦を行うのは人であり、人材育成は当社グループの持続的成長には欠かすことができません。社員一人ひとりが自ら考え、様々な経験や挑戦を重ねる中で共感力を高めていけるよう、活き活きと働ける職場づくりにも取り組んでいます。また、リスクが顕在化した際に柔軟に対応できるガバナンス体制を整えることが、経営の重要な役割です。リスクマネジメントについては、ホールディングス・事業会社・事業子会社という三層構造に加え、ホールディングスの監査部を横串しとした「Ⅳ線ディフェンス体制」を構築し、より強固な体制を敷いています。
当社グループは1884年の創業以来、様々な社会課題や経営環境に誠実に向き合いながら、技術を通じて真っ当な商売を貫くという姿勢を脈々と受け継いできました。そして今後は、その精神のもと、日本や世界が国家的に進める循環経済への移行を通して持続可能な経済成長を実現することが、新たな使命となります。「循環のクオリティを追求する。」という言葉には、当社グループの目指す方向性を端的に示すことで、少しでも多くの方々に共感していただきたいというおもいも込めています。
当社グループはこれからも、創業以来受け継がれてきた真っ当な商売を継続し、持続可能な社会の実現に向けて着実に歩みを進めていきます。
2025年8月
DOWAホールディングス株式会社
代表取締役 社長執行役員 CEO
関口 明