DOWAグループの事業活動は、生物多様性や自然資本の恩恵に依存して成り立つと同時に、さまざまな影響を及ぼす可能性があります。当社は生物多様性基本方針に基づき、生物多様性を含む自然資本に配慮し、その維持・保全・回復に努めます。また、生態系や自然資本の利用については、当社事業による機会とリスクの整理を進め、生物多様性に与える影響の最小化を図るとともに、地域の自然との調和に配慮した植林などの生物多様性の保全を積極的に行います。
企業の経済活動は、大気や水、森林、鉱物などの自然資本に依存するとともに、自然界に様々な影響を及ぼすリスクを抱え、生物多様性の維持は企業が事業を継続するうえでも必要不可欠な要素として認知されています。当社の製造事業は非鉄金属を中心としているため、水を除き主な原材料に生物資源は使用していませんが、環境管理や土地利用において生物多様性に影響を与える可能性があります。当社はTNFDフレームワークに基づく情報開示に向けLEAPアプローチを導入し、当社の事業における環境リスクや自然関連の影響の評価を開始しました。2024年度はスコーピングを行い、当社の事業が環境管理や土地利用において自然資本に影響を与える様々な要因(接点)を検討し、特に当社に関連が深い項目の特定を行いました。
「鉱山」 「水」 「森林」
「鉱山」「水」に関しては主に環境保全ページにて掲載しています。
2024年度は、当社の事業が自然資本に影響を与える様々な要因・接点を検討するため、製造拠点を中心とした国内外90事業所を対象として以下2つの調査を実施しました。今後は、この調査結果をもとに、優先すべき「影響を受けやすい場所」と「重要な場所」の地域・拠点を抽出し、事業における依存度と影響度合いを把握する予定です。
各事業所の水利用状況および事業所周辺の水環境の情報を整理し、高リスク地域の特定と、潜在的な水リスクの大きさについて調査を行いました。評価にあたっては、WRI(世界資源研究所)が開発したAqueductのツールを用い、「プロジェクトサイトの環境」および「事業による水利用の状況」の2つの要素を組み合わせて実施しました。
生物多様性に関連する潜在的なリスクを把握するために、事業所周辺における生物多様性の状況から重要な地域の抽出を実施しました。調査にあたっては、グローバルレベルで同一目線で評価を行うため、世界的に広く用いられている生物多様性評価ツールIBATとGlobal Forest Watchを用いて取りまとめを行いました。
当社グループは、原料を長期的かつ安定的に確保するために資源開発を行っています。資源開発や鉱山の操業は自然資本や地域社会へ与える影響が大きいため、海外鉱山では開発前のプロジェクト段階から生態系や水質などの定期的な環境モニタリングと環境アセスメントを適切に実施しています。また、これらのサイトでは生物多様性行動計画(BAP)を策定し、モニタリング結果を計画へ反映しています。このように生物多様性など自然資本への負荷を最小限に抑える取り組みを行っています。

- 拡大
- 水質・生態系モニタリング(海外探鉱プロジェクト)
DOWAグループでは、新たな製造拠点の建設や新規事業の開始する場合には環境影響評価を実施し、周辺地域や敷地内の生物多様性の状況の確認、必要な配慮・保全を行っています。
森林資源である紙の供給は重要な生態系サービスの一つであり、当社グループ全体では毎年大量の紙を使用し、その恩恵を受けています。生物資源の持続可能な利用に取り組むため、コピー用紙やパンフレット類には古紙や森林認証材パルプを配合した紙を採用し、用紙調達の際には、紙そのものの環境性に加えて、CSR調達方針に基づき調達先企業が「責任ある用紙調達」を通じて生物多様性に配慮していることを確認のうえ、調達先を選定しています。
- 木材原料の調達方針を定めている
- 木材原料の合法性を確認する管理体制を構築し、運用している
- 原料パルプの調達先に関する情報を提供できる
かつて鉱山活動による森林破壊を経験したDOWAグループにとって、緑化や地域固有植生の復活などの活動は使命であり、継続して取り組んでいく大きな課題です。鉱山跡地は植物の育成が難しく、植樹にあたっては植生生態学の研究を行っている(公財)地球環境戦略研究機関国際生態学センターの指導のもと、2006年より秋田県小坂町にある製錬所敷地内で植樹を開始しました。人工林とは異なる人の手による維持管理を必要とせず自然で安定した森を作ることを目標とし、地元の森林組合や種苗業者の協力を得ながら、地域本来の植生を回復する「ふるさとの木によるふるさとの森づくり」を進めています。
2007年からは「小坂・ふるさとの森づくり植樹祭」として、地域住民の方々と緑化・植樹活動を始め、現在は地域コミュニケーションの場としても根づいています。2024年6月には、地元の児童や住民の方々をはじめ、当社グループの社員など約250名が集い、14回目の植樹祭を開催し、ミズナラ、ブナ、ケヤキ、カツラなどの地域の広葉樹15種、1,200本の苗木を植樹しました。2024年までの植樹本数は約20万本となりました。1年目に植樹した苗木は大きく成長し、現在では小さな森の様相を示しています。
2024年までの植樹本数 : 約20万本
樹種 : ミズナラ、ブナ、ケヤキ、カツラなどの地域の広葉樹15種